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再就職だからこそ自分らしいスタイルを

メンタル不調で離職する前の対人関係はどのようなスタイルでしたか? 周囲に気を使いすぎ、自分の言いたいことも言えないまま、我慢ばかりしていなかったでしょうか。気配りができることは社会人として素晴らしいスキルですが、限度を超えると負担になります。

せっかくの再就職だからこそ、自分の意見をさわやかに主張できるようになりたいものです。今回は、復職支援のプログラムでも取り入れられることが多い『アサーション』について、紹介します。

  • 言いたいこともぐっと飲みこんで……我慢の結果うつ状態に

    言いたいこともぐっと飲みこんで……我慢の結果うつ状態に
    ※イメージ写真です

    欧米とは異なり、日本人は自己主張するより、周囲と調和することを好む傾向があります。職場という集団のなかで目立つよりは、対立を避け、周りに溶け込むほうを選ぶ人が多いように思います。

    しかし、表面上は穏やかに見えても、こころに不満はないでしょうか。

    例を挙げてみましょう。

     

    面倒な業務、やりたくないけれど自分が引き受ければうまく回る

    気乗りはしないけど、付き合いを断れず、飲み会に参加してしまう

    いつも定時で退社する同僚に仕事の手伝いを頼みたいのに、気兼ねして言えない

     

    このようなケースは皆、笑顔で「いいよ」と言いながら、こころの中では反対の気持ちを抱えているわけです。素直に自分の本心を伝えることができればよいのでしょうが、もちまえの気遣いがぐっと押さえつけてしまいます。

    本当の気持ちを押し殺して、周囲と調和する行動をとってしまう。自分ひとりの我慢で丸く収まるならと意見を引っ込めてしまう。

    職場においてこのような対人関係のクセを持っている人は少なくないように思います。

     

    ですが、これも程度の問題で、自分の気持ちを抑え続け、周囲に合わせることばかりしていると疲れ切ってしまいます。本心と環境との間でストレスを抱え、結果的にメンタル不調をきたすこともありえます。ですが、それで心身不調におちいっては本末転倒ではないでしょうか。

     

    このように考えると、適度に自分を表現しつつ、周囲とよい関係を維持していく重要性がわかります。ストレスフリーな対人関係がメンタルヘルスによい影響を与えることは言うまでもありません。

  • 対人関係のコツは「私」からのメッセージ

    再就職だからこそ自分らしいスタイルを
    ※イメージ写真です

    では、ストレスをためないために積極的に自己主張していきましょう、自分の意見や気持ちを伝えていきましょう、と提案するのは簡単です。

    しかし、現実に行動に移すとなると、どうすればいいの、と思う人が大半でしょう。

     

    たとえば、会議やミーティングでの意見の食い違い。自分が引き下がれば、場は収まるかもしれませんが、業務がうまく回ると思えないとします。

    あなたはその場の調和と、後々の業務の負担、どちらを選びますか。

     

    自分の意見を押しつけてしまった罪悪感か、何も言えず業務の負担だけ増えた不満。どちらにせよ、ストレスがこころにのしかかるはずです。

    一番よいのは、きちんと自分の意見を主張でき、周囲との調和も乱さず、誰か一人が負担を背負い込むのではない職場環境ではないでしょうか。

     

    そのためには、まずしっかりと自己主張をする必要があります。この方法にはコツがあります。

    心理学の言葉では『アサーション』と呼び、基本的な考え方はシンプルです。

    「あなたの考えは間違っている」という相手を否定するメッセージではなく、「私はこう思う」という「私」発信のメッセージに置き換えることです。

    自分の意見を主張したいときに、“あなた”を主語に置くとどうしても否定になってしまいます。そして、否定されて喜ぶ人間はいません。これが対人関係の摩擦のもとであり、対人トラブルの原因になるのです。

     

    しかし、メッセージの主語を「私」にするだけで、ニュアンスはずいぶん変わります。

    「あなたはそう思うんですね。私はこう思います」という、相手を否定しない自己主張に変わります。

    「私はこうしたいです」という言い方もよいでしょう。相手を否定するのではなく、あなたの願望を伝える表現ですのでとげがありません。

    このように表現方法を一つ変えるだけでコミュニケーションの質は変わります。

    あなたは自分の気持ちや考えを押し殺す必要はありませんし、適切なコミュニケーションは対人関係の質も高めます。

     

    意見が食い違っても、それはあくまでも考えの違いです。お互いの人間性を否定するものではありません。そのようなコミュニケーションが可能であれば、自分の意見を発信するのに二の足を踏む必要はなくなるはずです。

    活発な意見交換は人間関係をスムーズにします。職場の風通しも良くなるでしょう。

     

    この意味でも、アサーションのスキルを用いたコミュニケーションはストレスフリーな職場環境には欠かせないものです。

  • コミュニケーションスキルも一歩ずつ。あなたらしさを身につけよう

    周囲との調和を乱したくなくて、自分の意見や気持ちを飲み込んできた人も、アサーションを使うことでとげのない自己主張が可能になると伝えてきました。後はあなたが実行するだけです。

    そうはいっても、実際にやってみるとなると二の足を踏んでしまう……。おそらく大半の人はそうでしょう。

    自分が意見を言うことで、誰かを不快にさせないか、周囲から白い目で見られないか、不安を抱くからではないでしょうか。

     

    しかし、その不安を抱く前に、周囲の気持ちを実際に尋ねてみましたか。

    「面倒な業務だからこそ、みんなで手分けしたほうが早く終わると私は思うんだけど……」

    そんな“私”のメッセージを発信しましたか。

    そうしたら、周囲からはどんな反応が返ってくるでしょう。

     

    実のところ、あなたは尋ねる前から、心配しすぎるあまりコミュニケーションを諦めてしまっていませんか。

    実際に、相手の意見を尋ねてみたら、あなたと同じであるかもしれません。異なる意見の人もいるかもしれませんが、意見の違いはあなたの人柄の否定ではありません。

    それでも、心配してしまうのがあなたなのです。自分の対人関係のクセを知ることで、新しいスタートを切ることが可能になります。

     

    まずは意識的にアサーションを取り入れていくようにしましょう。いきなり完ぺきを求める必要はありません。スモールステップで、一段ずつ階段をのぼればよいのです。

    表現するのが苦手なだけで、あなたのなかに意思がないわけではありません。

     

    自分の意見や意思を言葉にしていくトレーニングです。

    最初は難しく感じるかもしれませんが、この経験を積み重ねることによって、発言する、コミュニケーションを取る、ということに自信がついてきます。

    意見が違うことで、周囲に悪意を持たれるわけではないという自信です。

     

    この成功体験が積み重なることで、あなたは周囲との関係性にも自信を持つことができ、より活発に意見を交換し合うことが可能になるはずです。

    自分を主張したり、ときに周囲と異なる意見を言ったとしても、あなたの人間関係を損なわないと信じることができるようになるのです。

    せっかくの再就職だからこそ、自分を抑え込むスタイルではなく、気持ちよく周囲とコミュニケートできるスタイルをお勧めします。

藤澤 佳澄
執筆:藤澤 佳澄
執筆:藤澤 佳澄
大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程単位取得退学。大阪大学非常勤講師をはじめ、各種教育機関で教鞭をとる。 メンタルクリニックにて十年弱心理職として従事。「体験型ワークで学ぶ教育相談」(大阪大学出版会)一部執筆。現在は特定非営利活動法人Rodinaの研究所にて、リワークを広く知ってもらうための研究や活動をおこなう。