在宅勤務でメンタルヘルス不調にならないために

2022/4/12 最終更新

新型コロナの感染拡大はとどまらず、日本の大都市圏では緊急事態宣言も長期に渡り発出中です。在宅勤務は珍しいものではなくなりました。通勤時間が減るなどメリットもある一方で、メンタルヘルス不調者が増えるなどデメリットもあります。

デメリットを減らし、メリットを最大限活用できるよう、在宅勤務の働き方を見直してみましょう。

  • あなたの生活リズムは大丈夫? 昼夜逆転は不調のもと

    在宅勤務でメンタルヘルス不調にならないために

    在宅勤務のおかげで、遠方までの通勤時間が減り、ぎりぎりまで寝ていられるようになったビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。

    なかには就業直前までベッドにいるという声も聞かれます。

    そのまま食事をとらずにパソコンの前へ。顔が見えないからと、着替えもせずに就業していませんか。

    朝食も、お腹が空かないので食べないという人もいるかもしれません。

    一日中自宅にいるので運動量が少ないのです。空腹を感じにくいのはそのためです。

    部屋のカーテンを開け、朝日を浴びることはありますか。

    早朝の日光は睡眠の質を高めます。スムーズな入眠には欠かせないものです。

    もし、寝つきが悪い、夜中何度も目が覚める、など、睡眠の不調が出ているなら、それは朝日を浴びない生活習慣のせいかもしれません。

    夜、寝つきが悪いせいで、起床時間も遅くなる。これでは悪循環ではないでしょうか。

    せっかく朝に余裕ができたのであれば、これを有効活用しない手はありません。

    たとえば、以下の活動をおこなうことで、心身のバランスを整えることが可能です。

     

    マインドフルネス

    リラクセーション

    三密を避けた、軽い運動

     

    マインドフルネスとは「今、ここ」に焦点を当てた心の持ち様のことを言います。「今、ここ」に心を向け、瞑想を行うことで、脳を活性化させることができます。ストレスをたまりにくくし、仕事のパフォーマンスも上げられます。

    リラクセーションとはストレス対処法のひとつです。緊張し、不安を感じているときに、瞑想をしたり、呼吸法を実践することで、リラックス効果を得られます。

    軽い運動もストレス対処に効果的です。身体を動かすことで、脳も活性化し、程よい疲れも得られます。

    程よい疲れは快適な睡眠と規則正しい食生活にも不可欠です。

    これらの活動は、朝の隙間時間にも実践できます。その後の仕事の効率を上げるためにも役に立つと言えるでしょう。

    時間的にゆとりのなかった勤務体制ではできなかった余暇の楽しみ方。せっかくならば有意義に活用したいものです。

  • スマホ依存の危険性。睡眠前は特に注意

    スマホ依存の危険性。睡眠前は特に注意

    在宅勤務のおかげで一日中パソコンを眺めている人も多いのではないでしょうか。

    パソコンやスマートフォンはブルーライトという強い光を発することで知られています。

    この光は睡眠をもたらすホルモン“メラトニン”の分泌を妨げ、睡眠の質を低下させるとわかっています。

    一方で、在宅勤務の余暇をどのように過ごすか、という質問で、「スマホやゲーム」という回答が上位に挙がるのも事実です。

    自宅でできる娯楽となると限られますが、就寝の直前までスマホやゲームを見ているのはおすすめできません。

    スムーズに寝つけなかったり、眠りが浅くなったり、夜中に目が覚めるという影響を受けてしまいます。

    睡眠の問題はメンタルヘルス不調につながりやすいと言われています。

     

    昼間も眠気が取れない。体がだるい

    頭がぼんやりして、作業効率が上がらない

    なんとなくやる気が出ない

    集中力が低下している

     

    など、不調感を覚えたら黄信号です。生活習慣を見直しましょう。

    どうしてもスマホやゲームを手放せないという人は依存状態に陥っている可能性もあります。現代人には当然の娯楽と考えず、ある程度自分に制限をかけて楽しむことも重要です。

  • 浮き彫りになった新たなストレス。それは孤独

    浮き彫りになった新たなストレス。それは孤独

    在宅勤務が広まるにつれて、色々なことがわかってきました。そのひとつが、在宅勤務で多くの人が孤立感、孤独を感じているということです。

    家族と一緒に生活している人でも、家族間の問題が浮き彫りになることがありますし、ひとり暮らしの人は言うまでもありません。

    在宅勤務になり、最初は煩わしく思っていた人間関係から解放されると喜んだかもしれません。しかし、面倒だったはずのやりとりもなくなってしまうと物足りなさを感じ始めます。

    人間は社会で生きている存在です。面倒な人間関係でもなくなってしまうとストレスを感じるのです。

    時機に見合った適度なストレスはよいパフォーマンスを生み出します。ですが、ストレスが長期化し、負荷も高くなってくると、心身の不調をきたすもとになります。

     

    孤独感でうつうつとする

    さびしくて、ひとりで過ごすのに耐えられない

    ひとりでは何もする気になれない

     

    このようなことはないでしょうか。

    コロナ禍での生活は長期化し、自粛を強いられる環境も未だ継続中です。この環境では心身のバランスを崩さない工夫を努力しておこなう必要があります。

    では、このストレスに負けないためにはどうすればいいでしょうか。

    現時点では、直接顔を合わせ、コミュニケーションをとることはなかなか難しいでしょう。

    しかし、オンラインやSNSを活用し“人とつながっている”感覚を持つことは可能です。

    1日10分で構いません。離れて住んでいる家族や親せき、親しい友人やパートナーと言葉を交わすことはできませんか。

    オンラインで顔を合わせられればベストですが、難しければ声だけでもよいですし(電話)、それも難しいなら、メッセージのやりとりでもいいでしょう。

    とにかく、誰かとつながっている、という感覚を実感することが、孤独というストレスの対処法になりえます。

    お互いに都合があることなので、条件を決めて、コミュニケーションの時間をとることをおすすめします。

  • 職場の環境も大切。コミュニケーションがうつを防ぐ

    職場の環境も大切。コミュニケーションがうつを防ぐ

    コミュニケーションの重要性はビジネスシーンでも同様です。

    在宅勤務では、就業時間が一日のうち多くを占めます。

    一日中引きこもってパソコンと顔を突き合わせているだけではコミュニケーション不足になるのも自然なことです。

    そうすると当然、孤独感にさいなまれ、さびしくていたたまれないという気持ちになります。

     

    このような環境を改善するには、以下のような工夫が有効です。

     

    上司・同僚に対して、ささいなことでも、まめに連絡を取る(報連相)

    上司との一対一のMTGやチームMTG。定期的に上司や同僚たちと顔を合わせる機会を作る

    休憩時間や昼食時など、情報交換を兼ねてオンライン上で集まる

     

    相手の状況がわからないからと、遠慮してしまうことがあるかもしれませんが、上司や同僚も同様に考えています。勇気を出して一歩踏み出しましょう。

    ビジネスの報連相も大切ですが、砕けた場面での雑談にもストレス解消の効果があると言われています。何気ない日々のやりとりですが、ストレスマネジメントの一環として積極的に提案・参加してみてください。

    対面では気恥ずかしくて言えなかったことやできなかったやりとりも、オンラインだと意外に実現できるかもしれません。

    これまで疎遠だった上司や同僚との距離を縮めるチャンスです。

    オンラインを活用し、この機にいろいろな人とのネットワークを広げてみましょう。

  • まとめ

    コロナ禍における在宅勤務は、働き方にバリエーションを与え、時間的なゆとりをもたらしました。同時に、自律的に生活リズムを作らなければ、昼夜逆転してしまうというリスクもはらんでいます。

    在宅勤務では、これまで通勤に当てていた時間を余暇に使うことができます。リフレッシュの時間にしたり、趣味を楽しむのもよいでしょう。

    また、在宅勤務においては、コミュニケーションの重要性が叫ばれています。独居のビジネスパーソンは特に要注意です。就業時間にもできるだけ多くのコミュニケーションをとれるよう工夫してみましょう。

    プライベートはもちろん、ビジネスシーンにおけるコミュニケーションもメンタルヘルスによい影響を及ぼします。

    小さなことから積極的に他者と関わりを持つことで、メンタルヘルス不調から自分を守りましょう。

     

    ※コラム中の画像は全てイメージです

執筆:藤澤 佳澄
執筆:藤澤 佳澄
大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程単位取得退学。大阪大学非常勤講師をはじめ、各種教育機関で教鞭をとる。 メンタルクリニックにて十年弱心理職として従事。「体験型ワークで学ぶ教育相談」(大阪大学出版会)一部執筆。現在は特定非営利活動法人Rodinaの研究所にて、リワークを広く知ってもらうための研究や活動をおこなう。